第四項目 戦火

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「隊長! ぼーっとしてんじゃないよ!」  僕の背後から声を発し、風のような足取りで僕を走り抜き去って行ったのはベインだった。  彼女はそのまま小型の爆弾を持った魔族の一人に一直線に向かい、ハイキックで手に持っていた爆弾を払い落とし、そのまま勢いよく上に飛び、二段回し蹴りで魔族の顔面を射抜く。  まるでアクション映画のアシスタントがやるような動きだ、僕も出来るけど。 「ベインさん! 屋根から攻撃を仕掛けてる連中を頼む!」 「まかせな!」  この一週間で分かったのだが、彼女はめちゃくちゃ強い。どうして隊長に任命されなかったのかわからないくらい強い。  体術だけで言うなら僕の方が上かもしれないが、ベインは身のこなしの良さに上乗せして……武器の扱いにも長けている。  ベインは民家の屋根にいる魔族を倒すため、近くにあった木箱の上にジャンプすると、今度は出窓のちょっとした出っ張りに向かって飛び、最後に屋根の併に手を伸ばしてそのまま体全体を屋根へと移動させた。 「くそ、何だお前は!」  屋根裏にいた魔族は迫り来るベインに向かい、火の塊を出現させる魔法を連発する。ついこの間まで魔法なんて見た事なかった自分だが、一度見ればあまり大した事はなかった。  ぶっちゃけ言うなら爆弾の方が強く、弓の方が殺傷能力が高い。  魔法は一発当たった程度ならなんとか戦線復帰出来る程度の威力で、一度発射すれば追尾させる事は出来ない。発射されてから対象にぶつかるまでの速度が遅く、簡単に回避する事が可能だ。  その代わり魔法は連発出来るため、集団で使えば結構な脅威になったりもするが……。 「当たるとでも思ったかい?」 「く、くそ! 何だこいつ!」  ベインのような身軽で回避能力の高い人や、屈強な戦士に使った所で当たらないしあまりダメージにならないので意味が無い。  おまけに今回魔法を撃ってきてるのは一人だ、楽勝だろう。 「ほうら……回避してごらんよ」  僕がいる位置から離れていてもベインが何をやっているのかがわかる。懐や腰に装着していたダガーナイフを魔族に向かって次々に投げつけているのだ。  まるで流れるように飛んで行くダガーナイフ、きっと魔法なんて目じゃない威力だろう。  ベインさん、あなたはアサシンですか? とたまに突っ込みたくなる。屋根に簡単に登るし。
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