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「キュイ! キュイキュイ!」
「そうだ……! こんな事をしてる場合じゃなかった!」
わさびの慌てた鳴き声が耳に入り、怒りでグラウスを倒す事ばかり考えていた頭が、瀕死になっていた孝一の事を思い出させる。
「孝一……死ぬなよ、もう終わったんだから、ようやく終わったんだから!」
孝一は魔族の皇女様の膝の上で眠っていた、呼吸はある……まだ死んでないはずだ。
「どうにか孝一を助ける方法はないの!?」
「落ち着けユウイチ、慌てても現状は変わりはしない!」
「落ち着いてなんかいられないよ! 僕達は……只この世界に巻き込まれただけの人間なんだ! それで死んじゃうなんて……そんなの哀れすぎる!」
マスターが僕の肩に手を置いてそう言うが、心中穏やかでなかった僕はその手を払いのけた。
「この世界に……? そろそろ教えてくれ、あんた達は何者なんだい?」
前に聞いた時のような不穏な視線ではなく、今度は純粋に知りたいという思いが伝わる視線を僕にボルズは向ける。
「僕達は……この世界の人間じゃない。こことは別の世界から強引にこの世界に連れてこられた……只の学生だ!」
「只の……学生? いやこことは別の世界って……それは一体どういう事だい?」
今更正体を隠した所で何かが変わる訳じゃない、というより今はそんな事なんかどうでもいい。
「……待ってください! 守護龍の様子が!」
そう皇女エミリスに言われてわさびに視線を向けると、今孝一がわさびの力で緑色の光に包まれているのと同じく、何故かわさびまで緑色の光に包まれていた。
「キュ……」
「皇女様! 一体わさびの身に何があったんですか!?」
「わ……わかりません! 突然守護龍が苦しみだして……」
わさびの体から放たれる光がどんどん強くなっていく。
「目が……っく!」
光の輝きが目を開けていられない程にまで達した時、光は徐々に静まるかのように消えていった。
「一体……何だったの?」
視界が戻りすぐに何があったのかを確認するが、光を突然発したわさびは変わらず皇女様の腕の中にいるし、孝一だって相変わらず苦しそうに呼吸を荒くしている。
「……守護龍の背中を見てください!」
突然何かに気付いた皇女エミリスはわさびを上に掲げてそう言う。
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