第一項目 呪われた幻想の書物

5/33
前へ
/336ページ
次へ
 僕と孝一が仲良くなったのも、去年の夏の体育の時間に僕が男子禁制となっている女子のプールサイドを授業そっちのけで覗いていた事がきっかけだ。  無論僕はその後見つかって放課後にグラウンドを走らされる事になるのだが、同じく放課後に走り幅跳びの記録を録り直していた孝一にその時出会ったのが始まり。  その頃の孝一とは元々同じクラスだったのだが会話をした事もなかった。  走りながら僕は孝一の走り幅跳びの様子を見ていたのだが……結論から言うと孝一はとんでもない運動音痴だったのだ。  走り幅跳びなのに飛ばないでそのまま砂の上を突っ走るというファインプレイを何度も体育の教師に怒られながらも同じ事を繰り返していた。  そして遂に体育の教師が呆れ果てて記録を録る事を放棄した頃、僕の体罰も終了し、同じように汗だくになっていた僕達はその時初めて会話をしたのだ。  ふとその時偶然僕と視線の合った孝一は突然『人は飛べない』とか言いだしたのだ。……とても重く深く、重たい口調だったのを覚えている。  でも勿論僕にだって考えや思いあたる事はある、だから僕は、『女子の水着を見ろ……ほら……心が飛んだ』そう言ったんだ。  ……歴史に残る名言すぎて自分で言って鳥肌になったのを今でも覚えている。  それから僕達はなんとなく意気投合し、徐々に会話をする回数も増えて親友と言えるくらいまでに今日まで一緒になって色々とやってきたのだ。  今思えば友達になるきっかけって本当にくだらないね。 「ちなみにお前は今日どんな夢を見たんだ?」  昼食であるコンビニのサンドイッチの袋を両手で開け、横目で僕を見ながら孝一はそう言った。 「この学校の女子更衣室に潜入して聡美(さとみ)のパンツを大統領閣下に提供するという、エージェントよろしくな夢を見ました」 「それ……最終的にどうなるんだ?」 「女性を襲って終了」 「つまりいつも通りの夢だったんだな」
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68148人が本棚に入れています
本棚に追加