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『たか…たか……し?』
私は呟いた。
横たわっているたかしは、
何も反応をしない。
『嘘でしょ……?
結婚するって言ったじゃない!
指輪もくれたじゃない……。
ねえ、ほら…たかしの薬指にも…』
お母さんが握っていた右手を
見る。
たかしの指に、指輪は無い。
『え……?指輪は……?
いつも付けてるって
言ったじゃない……どういう…』
私の薬指に輝く、指輪。
いつかの予約と言ってくれた指輪。
『小池ちゃん……たかしはね、
死ぬ間際に……小池ちゃんじゃない…
違う女の人と、いたの…。』
お母さんは言う。
嗚咽を漏らしながら、静かに言った。
『その女の人も…死んじゃって…』
たかしが横たわったっている、
ベッドの横に。
たかしと手を繋いでいるまま、
横たわったっている遺体。
『よほど強く握っていたのか、
なかなか離れないんです……。』
『その人の免許証は
あるんですが、親族の方が
いないらしくて…。
遺体をどうしようかこちらも
困っているんですよ』
ナースと医者は言った。
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