誕生日

5/6
前へ
/6ページ
次へ
女? 手を繋いでいたって……。 私は、ベッドの横で ただ呆然としていた。 『たかしさんのご遺族の方。 あっ、お母さんですね?そちらは… ご兄妹の方でしょうか…』 たかしのお母さんを見て、 それから私を見る。 何いってんのよ…私はたかしの… 恋人、なんて言えない。 手を繋いでいるその女の人は、 周りから見れば彼女だから。 『いえ、たかしの『はい、妹です』 お母さんの言葉を遮り、言った。 『あ、ですよね。たかしさんの 恋人の……近藤香奈さんですが。 遺品を、お母さまと妹さんに 渡しておきますね。』 渡された、免許証と財布。 『遺品は、これだけでした。』 医者はそう言って、 病室から出て行った。 ナースはたかしの身体を拭いている。 『小池ちゃん……』 お母さんは、私を 心配そうに見る。 『私は大丈夫ですよ。 浮気は…男ならあるでしょうし』 ははっ、と軽く笑った。 無理矢理に作った顔に、 お母さんは悲しそうに言う。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加