子育ての定義

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「閻魔様の、息子?」 「そうだ。」 …不躾な態度で申し訳ない。しかし、当然の疑問だと思う。 首を傾げると、王は鷹揚に頷いた。 「え、でも、何故?」 「息子は先日生まれたばかりなのだが、儂の妻はそれを産んだ後亡くなってな。だが儂も公務で忙しい。育てる者がおらんのだ。」 「い、いやそれなら私じゃなくても…!」 乳母とか使用人とか! それがだめなら施設に預けるとか! そうでなくてもわざわざ私を選ぶ必要がどこに…… 抗議の言葉が浮かび口に出そうとしたが、閻魔様は目を細め静かに言った。 「それが出来れば、とうにやっておる。」 「え……」 重苦しい雰囲気に、私は一気に閉口する。閻魔様は大きく息を吐き出し、事の重大さを語った。 「誰に世話を任せようとも息子は拒み、遠ざけた。近づいた幾人もの使用人が灰へと化した。」 「……!」 「それほど強大な力を持つ赤子なのだ。扱いを間違うと、この地獄ですら危うい。」 「そ、んな……」 生まれたときからチートって超厄介じゃないの。 そんな、化け物みたいな赤ん坊を私に。 …って明らかに無理。いや、私が死ぬ。 「日當閨乃。そなたは、息子に選ばれたのだ。だからわざわざ人であるそなたを現世で亡きものとし、魂を此処まで運ばせた。」 「…え。」 えら、ばれた? 「では、会ってくるがいい。」 「え。」 「息子を、頼んだ。」 無責任にもそう言い放つ閻魔様。 彼が手を振ると同時に足場が消え、 言及する暇も与えられないまま、私は二度目のトリップをすることとなった。 .
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