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男は、古びたビルの前で足を止めた。此処に入れば救われるのだ。そう思いながらも、なかなか一歩を踏み出せなかった。
すると、ビルの中から数人の男女が出て来た。その一人一人の顔は、皆自信に満ち溢れ、輝いていた。
男は勇気を出し、足を動かす。
一歩、また一歩。
カウンターの女性がこちらに気付き、にこりと笑う。
「こんにちは」
明るく声を掛けられる。ビクリと体が硬直するが、先程のビルから出てきた人達の顔を思い出し、自分もそうなりたいと、掠れた声で話をする。
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