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鳩谷は壇上に上がった。
会場がざわついた。
「静粛に!!」
議長の注意で静まり返る。
「えー…皆さんもご存知の通り、謎の自殺者が10年連続で増加、就職者が激減し、GDPが10位に転落しました。
これは日本の将来を脅かす問題となります。
しかし、食い止める方法は見当たらず、無駄な死が増えるばかり。
なので私が掲げる法案は、
『自殺者リサイクル法』
です」
途端に場内がざわめいた。
「せめて私たち、政府が無駄な死から、名誉のある死を迎えさせましょう」
「ふざけるな!!」
「人の命をなんだと思ってる!!」
野党からものすごいヤジがとぶ。
「静粛に!!」
議長が注意するが、収まるどころか激しくなる一方。
とうとう野党側が途中放棄を起こし、国会は中止となった。
鳩谷は自室に戻る。
「やはり…受け入れてもらえなかったか…」
そのとき
「総理、お電話です」
「誰からだ?」
「いえ…それが…匿名希望で…」
匿名希望……?
「とりあえず繋いでくれ」
鳩谷は受話器を取る。
「総理、お元気ですか?」
「貴方は誰だ?なぜかけてきた?」
「名乗るほどでもありません。
それより総理、私の法案は通りましたか?」
「いや……やはり予想通りの結果だよ。野党からの風当たりが強くて…」
そう、この『自殺者リサイクル法』の真の立案者は電話の主だったのだ。
「お任せください。この法案は必ず通してみせましょう」
「しかし……どうやって…」
「ふふふ…それは言えませんね……ではまたお電話します」
「あっちょっと…」
電話は一方的に切れた。
一体何者なのか…果たして身元も分からない人間の話を鵜呑みにしていいのだろうか…。
鳩谷は不安だった。
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