制定

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「ありがとうございましたー」 坂本 康也(さかもと こうや)は処方箋を客に渡した。 大学を卒業し、薬剤師になって早5年。実家の薬局を継ぎ、細々とやっている。 やっと1人目の客を送り出し、ため息。 「はぁ~」 元々、康也は製薬会社へ就職を希望していたが、両親の突然の自殺で継がざるを得なかった。 「なんで…自殺したんだよ…」 自殺直後は自分に非があるから自殺したと自責していた。だからせめての罪滅ぼしとして跡を継いだのだ。 しかし、未だに自殺の原因がわからない。 康也は暇つぶしにテレビを見る。 「次のニュースです。 今日の未明、謎の自殺が相次ぎました。 自殺したのは、国会議員で、全て野党側の人間だということです。 遺書などは見つかっておらず、警察は今問題となっている突然自殺ということで捜査を進めています」 毎度毎度テレビは自殺のニュースばかり。もういい加減にしてほしかった。 ニュースは続く。 「自殺した国会議員は、自殺する前日に風邪をひいており、薬を飲んでいたらしいということです」 康也の両親も自殺する前日に風邪をひいていた。 康也の両親だけではない。全ての自殺者は、自殺する前日まで風邪をひいていたという結果が政府から発表されている。 「世も末だな……ゴホッゴホッ…」 康也は腋から水銀体温計を取り出す。 「38度…」 熱がある。どうやら風邪のようだ。 「医者の不養生…ではないか」 康也は市販されている薬を飲んだ。 今は冬。風邪が流行る季節……風邪は日本中に広まっていた。
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