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朔が芙蓉を忘れたと言う報告が日和からなされ、流石の飛高も言葉を失った。 「それ……は……また」 春香は既に瞳に溢れんばかりの涙を湛え、何て酷なと呟いた。 「……芙蓉はどうしておる?」 「以前の朔の相手をしているようなものですよ?ましてや結婚なんかしないって言い張ってたあのままの朔に婚約者だと伝えてしまったので警戒して……取り付く島なぞ与えましょうか?」 日和の言葉に飛高は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。 「……確かに」 「事ある毎に撮ってきた二人の写真を見せても朔は不思議そうな顔をするばかりで……ともすれば良く出来た合成写真?とか何とか言い出しそうな雰囲気でした。まぁ私と伶がいる手前その言葉は飲み込んで以前同様芙蓉が同室で過ごすことを認めましたが……」 「日和……それはそれで芙蓉にとっては酷な話やないの」 「尤もなお言葉ですが今芙蓉が朔の傍らから退くとなると幹部たちにとってはこれほどの好機はありましょうか?娘たちを傍に置こうとまた騒ぎ、場合によっては芙蓉の安全も図りかねます」 硬い表情に硬い口調のままに日和が言うも春香の瞳は揺れるばかり。
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