その愛は

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「ただいま」 玄関に靴があることを確認してから、出来るだけ不愛想に帰宅を告げる。何故ならそれを聞く相手が今の不快感の元凶だからだ。 「お、おかえり、晶(あきら)」 寝室から出てきた兄からの言葉に軽く手を振って返すと、すぐにベッドへと倒れこんだ。出来れば家事を一つもやりたくないほどに疲れているからだ。 ベッドの横に置いてある鏡に映った顔は疲れ切ったひどいものであり、思わず目を背けるように枕へと顔をうずめた。 「おいおい、ご機嫌斜めか?」 くそう、へらへらしやがって。なんなんだよそのキャラは。 「仕方ない、今日の夕飯は俺が作るか」 やれやれ、と言いたげなジェスチャーをしながら台所へと向かう兄を横目に、ゆっくりとまぶたを閉じる。 このままだと眠ってしまいそうだな、などと考えつつも目を開けることはしない。 どうやらその予想は見事に的中したらしく、気が付けば少し苛立った兄が目の前に立っており、時計の長針は最後に見た時と正反対の方向を指している。眠気で鈍る頭を掻きつつ、とりあえず上半身を起こすことにした。
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