その愛は

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嫌な夢を見た。正確には、面倒な夢、だが。 夢にまで出てくるなよなー。 そう不満に思いながら兄の作ったオムライスを頬張る。 なかなかの味だ。以前は何も作れなかったのに、成長したものだ、などとしみじみと感嘆していると、ふと、考えてしまう。 直後に同系統の色を見たのだから、それは仕方がない。そんなことは何度もあったし、もう慣れてしまった。 一瞬だけまじまじと見てしまったスプーンの上のチキンライスを口に運ぶ。やはり、おいしい。 全く、その時、夢、おまけに夕飯と三度も出てくるなんて、鬱陶しいやつ。 心中で少しだけ毒づいてからは、もうそのことは一切考えない。二口、三口と食べていく内、思い浮かんでくることもなくなった。 意識はすでに兄とくだらない話をすることに傾けられている。赤い液体が飛び散った黒縁メガネのことなど、もうどうでもいい。
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