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彼女は私へ近づきつつも悪意に満ちた目ではなかった。
”この人は多分私に何かを訴えようとしている・・・。”
そう思えた。
ズルズルと這う女の姿は恐怖を倍増させるが滑稽な感じにも思える。
私は聞いてみた。
『あなた、私に危害を加えるつもりないでしょ?』
自分の保身も合いまってか言い方が少し荒い口調にもなったが。
『ううう。うううう。ううううううううう。』
舌のない彼女は何かを言っている。
『書いて・・・』
私が言うと
ご う も ん に た え れ ば た す か る か も
一生懸命書いた血文字はかすれている。
何故、何故私がこんな仕打ちを受ける必要があるの?
そう、私は裏切った元彼を制裁しただけなのに・・・。
『あんたも王ちゃんの知り合い?』
薄暗い部屋の右奥から話し掛けられた。
『・・・はい・・・。』
『私たちはね、王ちゃんの愛人だよ・・・。ここにいる4人は王ちゃんに別れを告げられゴネた人たち。あんたもかい?』
『いいえ、違います。王ちゃんとは普通の知り合いで友達なだけです。』
『じゃああんた、多分王ちゃんの見ちゃいけない部分を見たんだろうね。許してもらえるといいね~。』私はまだよく理解できない。
王ちゃんの愛人たちと私がなぜ?
『ここはどこですか?』
『さあ?私達も分からないんだ。ただ、近くに川があり、たまに車の音がするのは聞こえるんだけど・・・。』
人里離れているわけではないらしい。
『何をしたんだい?』
彼女はそう言いながら私に寄ってきた。
『きゃ!』
奇声を吐いたのは言うまでもない。
彼女は髪の毛を半分剃られ、露わにされた頭皮は火傷していた。
お岩さん・・・
唇はウサギの様に裂かれている。
顎の先は削られているかのように丸く血みどろだ。
『顎・・・大丈夫ですか?』
私は変な質問をしてしまったと思ったが
『うん、大丈夫・・・慣れたし・・・痛みもない・・・。この顎ね鉋で何回も削られてさ。2cmは削げたかもね・・・。ふふふ・・・。』
彼女は微笑しながら横に座った。
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