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まだ幼さが残る少女は、彼の為に伸ばした長い金髪をナイフで無造作に切る。バラバラに切られた髪は、重さを失い、風に揺らめく。
「私は、彼の志を継ぎ」
重みのある甲冑を着込み、腰に剣を携え、マントを靡かせた出で立ちで彼女は言った。
「ドラゴン討伐に参ります」
男のような出で立ちをした娘を前に、王は止めることもできず対峙していた。
真剣に見つめる彼女の金色の瞳。決して揺ぎ無い信念がそこにある。
王は頷いた。
娘は、柔和に微笑を浮かべ、王の手を取りそっと握り締める。
「お父様、身勝手な娘をお許しください」
「これも其方の運命(さだめ)。気をつけて行くが良い」
父は、娘を抱きしめた。彼女もまた、別れを告げるように父の背中に手を伸ばす。
彼女は旅立った。父と生まれ育った国を残して。
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