序章-旅立ちと出会い-

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「ラッシュ……」  名前を呼んでいた。肩を叩いた男は、青年が知る男によく似ていたから。  少し焼けた肌に、すらっとした鼻筋。それに沿ってぴしりと伸びた凛々しい眉に、跳ねている短い黒髪。特に、どこかあどけなさが残る黒い瞳は、そのまま生き移したようだった。 「はぁ? 何言ってんだお前。俺は英雄ラッシュみたく、突っ込んで死んだりしねぇっつーの」  肩を叩いた男は、ぶっきらぼうに言い放つ。  イメージしていた人とはあまりに違う口調に、思わず青年は一歩引く。そして、彼をマジマジと見つめた。  どう見ても似ているが、凛々しい眉は額に寄って皺を刻んでいるし、あどけなさが残る瞳は細められて訝しげだ。  見たこともない表情に、青年はどうしていいかわからず、そのまま口を閉じてしまう。 「まぁ、いいや。他の誰もいかねぇよ。あんなとこ。俺はこれ、次第だったら一緒にいってやる。ただし、命危なくなったら逃げるがな」  これっと指で丸を作り、お金の仕草を男はしてみせる。  青年は、彼が言っている意味を理解したと同時に、彼が知っている人ではないことにも気がついた。彼はあの人とは別人だ。  青年は懐から、小さな麻袋取り出す。そして、肩から男の手を退けて、その手の上に麻袋を乗せる。
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