プロローグ

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職業柄、人を見る目はあるつもりだ。 人が一番弱いとき、苦しいときに関わる仕事だから、人の本性と言うモノを垣間見る事が多い。 其れを如実に体現するのは…やはり目だろう。 目を見れば何となく、雰囲気でその人の性質をうすらぼんやり感じ取れるようになっていた。 (ヤバい) コンビニの自動ドアが開いた瞬間に感じ取った。 目の前にはコンビニ店員と何人かの少ない買い物客。 その中の一人。 レジの前に立つ、ジャージ姿の中年男性。 足元はサンダルで、髪はねっとりと脂ぎっている。 それだけなら、良い。 例え見た目不審者や浮浪者みたいだろうが、実害がなければその人の自由だ。 しかし、問題は其処ではない。 長い前髪の向こう、その目が…一目見て、私の中の警報を掻き鳴らす。 (彼は此方側に立ってない) 位置的にではない。 言い方を変えれば、病んでいる、狂っている、精神的に常軌を逸している。 その証拠に、彼の手に握られているのは銃刀法違反に軽く引っ掛かるであろう、ナイフ。 (逃げなければ) そう反射的に思ったが、目を反らすことも出来なかった。 にやり、と。 男の口許が狂喜に歪む。 次の瞬間には、腹部に衝撃を感じた。 がくりと膝から崩れる。 「っの…糞ヤ…ロー…っ」 ズルリと、ナイフが抜ける感覚。 私は咄嗟に男の手首を掴んだ。 こんな刃幅のデカイ物で刺されたら、抜かれた瞬間に腹圧で中身が飛び出す。 出血だってナイフが栓になって、刺さってる方がまだ少ない。 第一手を離したらこの男は…次の獲物を狙うだろう。 何て事は、まぁ一瞬の内に考えるわけもなく。 手を掴んだのは…怒りからだ。 「滅びろ…ノヤロー…っ」 呪詛の言葉を吐く。 私の全身全霊をもって、目の前の男を呪う。 悲鳴とサイレンの音を聞きながら、私の視界はブラックアウトした。 最期に思ったのは、 (“ ”“ ”ごめんね…ママもぅ…一緒に居れないや…、ごめんなさい…“ ”さん…っ) 暗転。 ,
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