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いつも通り泣くのかと思ってた。
先輩のくせに強がりで弱虫な君を慰めるのは、今日でもう最後。なんて思ってたのに。
──────────サヨナラの日。
時はこんなに早いものなのか。
2年生と3年生。そんな小さな壁の中、私達はいつも通り隣り合わせに座っていて。
春風で桜が舞う。今日で最後のこの部室にいるのはいつも通り、私と玲奈ちゃんだけ。
私はそんな空間が大好きで。
「珠理奈ー」
なんて。そんな風に玲奈ちゃんは、いつも私の名前を呼ぶよね。
隣り合わせに伝わる温度が明日には消えてるなんて分かってるのに。私はまだ"卒業おめでとう"が言えないままで。
玲奈ちゃんが隣で笑った気がした。
こんな日に限って、笑った気がした。
だから、私は顔を上げることなんて出来なくて。
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