サヨナラの日。

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ーこんな日に泣かないなんてズルいよね。 少し開いた窓から桜が入ってくるだけで、私は泣きそうだというのに。 立ち上がった。玲奈ちゃんはやっぱり遠い存在になってて。 手を伸ばしても届かなくて、また私は俯いた。 ねえ、玲奈ちゃん。 この3年間貴女は誰を見ていたの? 去年の春、偶然落とした生徒手帳がきっかけで。貴女の存在を知りました。 「返して欲しかったら、おいで。」 なんて。誰も使わないこの小さな部室に招待されて。 本当は生徒手帳なんてどうでもよかったんだよ。行く度行く度貴女の事を知れるのが嬉しくて嬉しくて。 貴女の泣き顔も何度も見ました。 「そんな男、忘れなよ!」 って。いつも私が強く抱きしめては、ただただ頷くだけの玲奈ちゃん。 何度私が抱きしめたって、玲奈ちゃんは他の誰かを想ってて。 胸がチクリとした時には。 切ない気持ちになった時には。 どこかで分かってました。 ──これが恋なんだ、と。  
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