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「暑いなぁ……」
「そうだにゃー。けど、暑いって言うほど暑くなるもんだぜい」
現在時刻、八時〇〇分。
俺がこぼした独り言に、律儀に答えてくれる友人がいた。
そう言ってしまうのも、そう言われてしまうのも仕方のない話だ。
「そうは言っても……、こんなに暑い日は久しぶりだよなぁ……?」
「確かに。けど、夏は暑いのが自然だよにゃぁ?」
嘘を吐くのが下手なやつだな。
お前、全然汗かいてないじゃないか。
友人と話しながら猫坂を登って行く。その途中、石塀からひょっこりと猫が顔を出した。可愛い。
「最近は猫も増えてきたよな?」
「暑いのと何か関係があるのかも知れんぜい。ま、俺は知らないけど」
塀からこちらを見つめ、にゃぁと一鳴き。
俺の友人、今も隣にいる碓氷秋人(ウスイ アキヒト)もにゃぁにゃぁ言うが、この可愛さには勝てない。
「それにしても、もう俺らも二年だにゃー」
「なんだ、藪から棒に」
「……本当にこのままでいいのかにゃ?」
「…………何が」
俺の前を歩きだしたかと思うと、勢いよく振り返った秋人が手を横へ開く。
正直、聞きたくもないが、どうせこいつは聞かなくても話を進めるだろう。
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