例えて言うのなら、回らないドアノブのようだ

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俺のそんな思いを読み取ったのだろうか、秋人はにっこりと笑った。 意地が悪いというか、こいつはきっと俺の反応を楽しんでいるだけな気がする。 「いやぁ、そろそろ、人肌恋しくなってきたのでは? ということだぜい。ゆうやん」 「だから、どういう意味だよ。あとゆうやん言うな」 俺の名前は、久遠優希(クオン ユウキ)。だからゆうやん。気にいってはいない。 だいたい、久遠と言う苗字もそこまで好きではないし、優希も漢字があまり好きではない。 優しい、希望。 いったい、自分のどこにそんなものがあるというのだろうか。 「……んやー、ゆうやんのお人好しは無意識にフラグ立てまくるから、モテてるはずなんだけどにゃぁ……」 「俺のはおせっかいって言うんだと思うぞ?」 ほとんど、自分がしたいことをやっているだけだし。それでどう思われようと気にしない、はず。 秋人はそう言っても納得できないように顎に手を当ててにゃぁにゃぁ言っている。 「ほら、学校着いたぞ。結構時間危ないし、急ぐか」 「……りょーかい。ま、急いでもしょうがないもんねぇ」 強制的に納得させ、俺と秋人は小走りに教室へと向かう。 時間的にはぎりぎりだったけれど、いつもこのくらいだから間に合うはず……。 「……うおっ!?」 「…………!?」 曲がり角にて、腹部に軽い衝撃。 方向と小さく息をのむ音が聞こえたおかげで、すぐに人とぶつかったのだと分かった。
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