例えて言うのなら、回らないドアノブのようだ

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「わ、悪い! 大丈夫か?」 「…………っ」 見てみると、ぶつかった相手は女の子だったようだ。 体格的には当たり前のことだが、女の子は尻もちをついて下を向いていた。 「あ…………」 隣の秋人が何かに気づいたように声をあげた。 その声に振り向こうとすると、それよりも早く目の前の女の子が顔をあげた。 「………………」 「…………あ」 続いて、同じ声を俺もあげてしまった。 その女の子は、自分も、きっと秋人も知っている人物だったからだ。 「……ごめんな。どこか怪我とかしてないか?」 「…………」 答えを出さずに、女の子は立ち上がる。 それに合わせて、カチャカチャと音を立てる女の子のカチューシャ。 いや、もちろんそんな音を出すカチューシャを俺は知らない。 「えっと、確か同じクラスの……」 それは、彼女の頭に装備されたヘッドホンが鳴らした音だ。 ヘッドホン。 主に何かの音声、音楽を個人で楽しみたいときや、周りに迷惑をかけないようにするときなどに用いられる機器。 決して、学校に持ってきて良いものではない。 加えて、この無言。 「…………」 これが彼女、雪乃音芽(ユキノ オトメ)の代名詞と言えるものだった。
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