例えて言うのなら、回らないドアノブのようだ

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「……そんなに音楽が好きなのか……」 「待ていゆうやん。その素直さはちょっと心配になるぜい?」 とはいっても、実際それくらいしか理由はないと思う。 先生に叱られている時も同様につけたままなのだから、ただの好きでは収まらないだろうけど。 「……っと、そうこうしてる内に時間がやばいぜゆうやん!」 「うげ。精勤狙ってるんだ。遅刻は勘弁だぞ!」 秋人の声に背を押されて、俺はすぐさま駆けだす。 秋人もそれについて来て、教室まで結構全力目のダッシュ。 そのおかげもあったか、なんとかチャイムより先に教室に飛び込むことができた。 「……うっし、セー……フ?」 手を野球の審判よろしく横へ伸ばして教室内を見渡す。 がやがやと騒がしい教室の一角に、何もない冷たな空間が出来上がっていた。 「氷の乙女。そういえば同じクラスだったにゃー」 「俺、ついさっきそう言ったと思うんだが」 つい最近二年生に上がった身だからか、クラスの編成が良く分かっていない。 けれど、その一人がいることは、すぐに理解できた。 頬杖をついて、大きさのあってないヘッドホンから流れ出る音楽を堪能しつつ、外を見る。 窓際最後列と言うベストポジションで、雪乃は自分の世界を開いていた。
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