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いったい、彼女はその開け広げられた窓の向こうに、何を見ているのだろう。
ただ茫然と、その向こう側の景色を見つめているだけなのか。
「いやー。にしても可愛いよなぁ。一年の始めはかなり人気あったみたいだしにゃぁ」
「…………そうだな」
勿論、雪乃は登校初日、始業式の日からすでにヘッドホンを身につけていたし、無言だった。
まるで、他人と接することを根本的に嫌っているかのように。
「……寂しくないのかな」
「…………へ?」
微動だにしない雪乃を、窓から入ってきた風がくすぐる。
さらさらした髪が不思議な力に梳かされたかのようにたなびいた。
「多分、何か理由があるんじゃないか? 昔苛められて、それで他人と接するのが怖くなったとか」
「お、おいおいおいゆうやん? 俺、なんか嫌な予感がしてきたぜい?」
そうだとしたら、それはすごく、嫌だ。
何故かと聞かれれば、どうにもうまく説明できないし、言葉に詰まるだろうけど。
「……なんとかしてやりたいもんだな」
「……おせっかいも、ここまでくると凄いぜい……。聖人君子かっての」
「クラスメイトなんだし、そりゃあ気になるだろ」
「確かにそうだけど……。まぁ、ゆうやんの好きにしたらいいさ。俺はいつも通り、遠くからにやにや見つめさせてもらうぜい」
「…………おう」
その日は、暑かったんだ。
返事をして、すぐにやってきた先生に急かされて席に座った時も、一年の時とあまり変わりのない授業中も、暑かった。
だから、俺のおせっかいも、壊れてしまったんだろう。
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