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緊張してバクバクと心臓が脈を打つ、なんせ生まれて初めての告白だからな。
かじかむ手を、はぁ……と息をかけ俯きながら、さする。
雪こそ降ってはいないが、たまに吹き抜ける風が肌を刺すように冷たい。
白い煙のように吐き出す吐息はそれを静かに物語っている。
暫くすると、公園の中に誰か入ってくる足音が聞こえてきた。
顔を上げ足音の方に視線を送る。
そこには俺に向けて、控え目に手を振り歩いて来る一人の少女が。
鞄を体の前に持ち、栗色のセミロング、大きくぱっちりとした瞳、首にはマフラー、そしてロングコートに身を包んだ……そう、俺の初恋の人だ。
その姿を確認すると、途端にさっきよりも鼓動が大きく早くなる。
ゴクリと生唾を飲み込み立ち上がり、ひきつりながらの笑顔で手を振り返す。
「……落ち着け……落ち着け、俺。今日から俺は富士山になるんだろ? しっかりしろ!」
なんて事を、その子が近くに来るまで、ブツブツと呪文のように呟いていた。
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