約束

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「陽菜?」 「ありがとう……」 「え?」 「こんな私の事、守ろうとしてくれて……。私、気持ち悪いのに……っ」 そう言うと氷室くんが私の手首を掴んで私を押し倒した。 不機嫌そうに顔を近付けて鼻先が触れ合う。 そんな事にまでドキドキしてしまう。 そして、泣きそうになるの。 「言わなかった?そう言う、自分の事卑下するような事言ったらお仕置きだって」 「だって……、本当の事だも……っ」 「黙って。それ以上言うと、陽菜に酷い事したくなる」 氷室くんの目は哀しそうだった。 どうしてそんな顔をしてくれるの? どうして怒ってくれるの? 「氷室く……っ」 涙がこぼれ落ちた。 そんな私にハッとして氷室くんが体を起こして私を抱き締めた。 「ごめん……。陽菜の事になると、余裕なくなる……」 氷室くんは何も悪くない。 悲しいから泣いてるんじゃない。 嬉しいから泣いてるの。 嬉し涙なんて今まで知らなかった。 こんなに、心が温かいんだね。 「怖がらせるつもりは……」 「わかってる……っ」 「陽菜?」 「違う……、違うの……っ」 上手く言葉に出来なくて続きが言えない。 そんな私の背中をポンポンって、氷室くんが叩いてくれた。 それだけで、スッと言葉がすんなり出てきた。 「どうしてそんなに優しいの……?」 「陽菜が好きだから」 何の迷いも無しにそう言ってくれる氷室くんが愛しい。 「俺は陽菜が思ってるずっと昔から陽菜に片想いしてた。好きで、ずっと手に入れたくて……。そのせいで腐った時期もあったよ?だけど……」 氷室くんが私を少し離して微笑んだ。 「こうして今、俺の腕の中に陽菜が居る。それがどれだけ幸せな事か、毎日噛み締めてるんだ」 「氷室くん……」 「だから、正直陽菜が自分を否定してるのみると、辛い……」 哀しそうに伏せられた目。 ああ。 私、幸せだな。 こんなに素敵な彼氏が居るのに、どうして不安なんだろう。 「氷室くん」 私は氷室くんの顔を両手で掴んで自分からキスをした。 下手くそで、氷室くんが満足出来るようなものじゃない。 だけど、自然と体が動いていた。 離れて氷室くんを見ると、氷室くんは真っ赤になって目を見開いていた。 .
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