灯す火

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15分後、救急車がやって来て、私とお母さんを乗せた。 その時にはもう、体中の痛みは消え、傷すら私の体から消えていた。 救急隊の人は、担架で運ばれた私を見るなり、目を細めて言った。 「傷が無い…?あなたがこの子の母親ですね?」 救急隊の人は、お母さんにそう聞いた。 お母さんは、不意をつかれたように、その言葉に敏感に反応した。 お母さんの顔は冷や汗で濡れていた。 涙では無く…冷や汗で… 「は、はい!そうです…」 「お母さん、彼女には傷ひとつ無いのに、体中は血だらけです…何があったのか説明してもらえますか?」 そう言い寄られたお母さんは、俯き、体を震わせながら言った。 「分か…りません…」 「この血が一体誰の血なのか、調べさせてもらいます。よろしいですね?」 「はい‥」
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