灯す火

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私は病院のベッドで目覚めた。 体を伸ばし、お母さんがいない自由を感じていた。 病院の窓から空を見上げた。鳥は自由に飛び、空は自由に輝いて、その下で生きる人達は、皆自由に自分の進むべき道を進んでいた。 そんな、自分が体感したことも無い世界を、窓越しに見ていると、突然病室のドアが開き、そこからお母さんと1人の医者が私のベッドの前に歩み寄った。 「…京子さん、あなたが浴びていた血は…あなたのものでした。一体…あなたの身に何が起こったんですか?」 医者が私にそう聞いた時、お母さんは私から顔をそらした。 お母さんの体は震え、恐怖の色がうかがえた。 私は、こう答えた。 「分かりません…」 その瞬間、お母さんは驚いた顔で私を見た。 涙を浮かべ、耐えきれずに私を抱き寄せた。 「ごめんね!ごめんね‥本当に、ごめんね!こんな母親で……ごめんね…」 お母さんは小声で言った。 ‘あなたを産んで…良かったわ, 気づけばそこに医者はいなかった。 私は、初めてお母さんの優しさに触れ、お母さんの、私に対する涙を見た。 「屋上に行きたいなぁ。自由な空を窓越しじゃ無くて、ただ眺めていたい」 お母さんと私は手を繋ぎ、屋上へ向かった。
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