好きな人と心友と

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あたしは意を決して、すうっと息を吸った。 そして教室の中へずかずかと入り、祐樹の前に立ちはだかる。 「祐樹」 「!?おまっ…聞いて……」 「いいから来て」 「は!?」 祐樹の背中を押して教室から出る。 動揺したままの祐樹は抵抗できず、そのままあたしに廊下へ押し出された。 いつもの祐樹なら敵わなかっただろうけどね。 「で、何だよ」 「………あたし」 一回目を瞑り、その瞳をゆっくり開く。 「祐樹の恋を応援する」 「………は?」 数分、沈黙。 まぁそうだよね。言ってること矛盾してるし。好きって言ったり、応援するって言ったり……。 でも、もう決めたから。 「ほら、あたしが居た方がラッキーだと思うよ?あたし、美咲の心友だしね!」 「…まぁ、な……」 あまりの矛盾っぷりに呆然としている祐樹。一時は直りそうに無いな、これ。 とりあえず、雰囲気を和ませるために何か考える…。 ……そうだ! 「あーっ!もしや、あたしに応援されるのが残念!?あたしの事好きになった!?」 「…それは無い」 「知ってるよーだ!」 「じゃ言うなよ…」 睨むようにこっちを見る祐樹。これでこそ、祐樹らしい。 よかった…。 「じゃあ、あたしはこれから祐樹を応援するから!」 「……どうも」 「役に立つよ?」 「…それは嬉しいな」 「信用してる?」 「いや。……けど」 一旦、言葉が止まる。 そのまま祐樹はあたしに背を向けて歩き出す。 「…協力されてやってもいいぜ?」 「…っぶ!何それ!日本語おかし~」 あたしが腹をかかえて笑った時には、もう祐樹の姿はなかった。 今の意味分かんない日本語はきっと……素直に“協力して”って言えないからなんだと思う。それがまた祐樹らしい。 「…あーあ」 終わっちゃった。あたしの、本気の初恋。しかも最悪の形で。 でも、友達では居られるって事だよね?傍に居られるってことだよね? それに協力するって事は、祐樹の役に立てるって事。 祐樹の笑顔が見れるっていう……事。 これよりいい事ってある?自分の恋を犠牲にすれば祐樹が幸せになれるかもしれないんだよ? ―――あたし、祐樹を応援する。 祐樹と美咲をくっつけてみせる。 やってみせる……!! この時あたしは。 片思いのまま、応援することの辛さを、苦しさを。 何も知らなかったんだ…。
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