カジノ【Gold.】～儚い願い～

思いは

優壱は暗くなる自分の影を振り払うように首を振った。

とにかく今は仕事に慣れる。

それしかないだろう。

優壱がスタッフルームに入ると机に突っ伏している人物の姿が見えた。

顔は見えないがセミロングの銀髪で誰かはすぐに分かった。

「バーテンダーの……確か鏡さんだったかな？」

優壱は主にディーラー達のボディーガードをしているため、バーテンダーなどとはあまり交流はない。

机に突っ伏している様子を見て具合でも悪いのかと少し声をかけてみることにした。

「鏡さん。鏡さん」

肩をつかんで軽く揺すれば、鏡はゆっくりと目をこちらに向けた。

いつもは長い前髪に隠れなかなか見れない瞳が優壱を静かに見つめる。

その瞳の色は――赤。

優壱の紫も十分珍しいが、鏡は更に珍しい。

優壱はその赤い瞳に見とれていた。

銀髪の中から覗く赤い瞳……

全く異なる色が織りなすコントラストが優壱を魅了した。

だが、寝ぼけていた鏡はハッと目を覚ました。