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辛そうに顔を歪める優壱を見て鏡は自然と立ち上がり、優壱の頭を撫でていた。
優壱は唐突な鏡の行動に暫く目を瞬いていたが、やがて小さく微笑む。
「優しいですね、鏡さんは」
優壱は撫でられ、気持ち良さそうに目を閉じた。
優壱に小動物のようだと思われた鏡は犬を撫でている気分になった。
そんな中、優壱は独り言のように言葉を紡ぐ。
「鏡さん。俺は一番身近な人の痛みに気付けなかったんです
一番身近な人を……守れなかった
その人は何度も俺を守ってくれたのに……」
鏡は少し考えてから口を開く。
「いつまでも自分を責め続けないんでいいんですよ
たまには誰かを頼たって、いいんですよ」
優壱は頭の上にあった鏡の手を取り、自分の頬に当てた。
「少しの間だけ……このままで」
断る理由もなかった鏡はただ黙って、優壱の願うままにした。
その時、
「優壱君居ますか?」
ガチャっとドアが開けられた。
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