思いは

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右目のみ仮面で隠した青年はカード、ブラックジャックでとある組の組長の相手をしていた。 ブラックジャックとは簡単に説明すると交互にカードを引いて21に出来るだけ近づけた方が勝ちというシンプルな物だ。 「Stand」 この言葉は今手持ちの札で勝負をするという合図。 組長は煙草をくわえたままニヤリと口端をつり上げる。 余程自信があるのだと伺える組長の出した手札は――20。 周りからざわめきの声が上がる。 だが、中にはディーラーの出す数が予想出来ている者も居た。 ディーラーはその予想通りの札を組長の目の前に出した。 “21” 「俺の勝ちです」 組長の表情から笑みが消え、くわえていた煙草がポカンと開いた口から落ちた。 周りからは『やっぱりか』という声が口々に聞こえた。 その理由は、彼が負けなしのディーラー、八知 雪斗だからである。 彼を負かしたいとそれだけのために来る客も少なくはない。 かけた自分のコインが奪われていくのを見て、組長はハッと我に返る。
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