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そう言った客の表情は一切変わらない。
それから客は優壱には大した興味も示さず雪斗に話しかける。
「ねぇ、今日は台につかないの?」
「ええ。一人のディーラーがあなたを負かしたいと豪語して俺の台を占領されまして」
「ふーん……
アンタの台のとこに居るんだ」
客はそう言うと智里の方へと向かった。
「勝てますかね?」
「どちらが?」
「……雪斗さんはどっちに勝って欲しいんですか?」
優壱の問いに雪斗は暫し沈黙した。
そして小さな笑みを口元に浮かべて答える。
「強者が勝つ。それだけですよ」
結局、“どちら”という問いには答えてくれなかった。
優壱は仕方なく客と智里の方へ目を向ける。
智里は目の前の客が何者であるかを理解したようで真剣な表情で手持ちの札を睨んでいる。
それに対し、客は頬杖をつきだるそうな調子でガードを見ていた。
本当によく分からない客だな……
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