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「それなりによくやりましたね」
雪斗がそう言うと、智里は顔を輝かせ、幻影であろうふさふさの尻尾を千切れんばかりに振ったのち、歓喜のあまりか何処かへ駆け出した。
そんな智里を見送った雪斗の元へ、先程智里に負けた客が歩み寄ってきた。
「これで台につける?」
その言葉で優壱は多くのことを理解した。
「お客様。“わざと”負けられたのですか?」
優壱の問いに客はクスリと笑みで肯定した。
だが、わざと負けたにしては、フォア・カードという中々強い役だった。
これでは智里がストレート・フラッシュかロイヤル・ストレート・フラッシュでなければ勝てない。
ならば答えは一つ。
「あなたは智里さんがストレート・フラッシュなのを見抜いていたんですね」
断定口調で言う優壱に客は小さく笑って言った。
「さあね」
本当に読めない人だと、優壱は心の中で深いため息をついた。
この人がわざと負けた理由……
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