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何もない宙に斬撃が走ったのを感じた。
いく筋も。
突然一匹のオオムカデの胴が裂けた。
続いて別の個体の触角。
また別の個体の足が数本。
ムカデたちのいるあたりの空間に無秩序に縦横にかまいたちが踊っていた。
「なんだよ、コレ。すごすぎるだろ」
思わず漏れた言葉。
だけど、こんな技があるんだったら、ホントにオレなんて瞬殺だっただろうに。
オレと同じでやはり彼女にも、殺るだけの覚悟はなかったということだろうか。
「すごいっちゃあ、すごいが…………」
ガラ師匠が語尾を濁す。
「え、なんだよ」
「見てみろ」
アゴをしゃくって指された先ではミウがゆっくりと膝をついていた。
そのまま地面に倒れこむ。
「たぶん、気絶するぐらいまでに気力を消費する技なんだろ」
のんびりと言いいながら支えに行こうともしないガラ師匠にイラつきながらも、オレはミウのもとに駆け寄る。
膝がガクンと抜け足が絡む。
結局、倒れこんでいるミウの脇に跪く格好になってしまった。
彼女を抱き起こしてあげたかったが、腕にも力が入りそうになかった。
「言ったろうが、死にかけたって。まあ、ちょうどいい。そこで二人仲良くへたり込んでな」
言うとガラ師匠は悠然とオレたちの横を歩いてゆく。
少し先まで行き、立ち止まると声を上げた。
「八卦!」
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