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「やらせねえよ」
振られる左右の頂点にそれぞれ炎が生まれる。
苦無は振り子の軌道から、右の頂点を超えて円の軌道へと変化する。
釣られるように動きだした双の炎が苦無で創られた円周を走る。
その時、突然別の動きが二人の間に割って入った。
長大な黒影。
鈍い光沢を残像としてオレの目に残し、起き上がった一匹のタワラオオムカデはカブトムシの鎧を着た人間へと襲い掛かった。
まさに一瞬のできごとだった。
オレには何が何だか分らなかったが、気が付くとカブトムシの角がムカデの胴を貫き、真っ二つに裂いていた。
飛び散る赤茶色の体液はだが、哺乳動物のように多くはなく、のたうつ二つの胴が盛大に撒き散らしはしたが、カブトムシヤローは返り血らしい返り血は浴びていなかった。
「やっぱりムシの生命力は大したものですね。まあ、そうじゃなきゃ、甲虫装甲にも使えないわけなんですが」
顔色ひとつ変えずに言う。
「平野さんの技も威力は申し分ありませんが、精度に課題を残すよう――あぶっ」
得意げに語り始めるやつの顔に炎の円盤が叩き込まれて爆発した。
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