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かんかんかん
ぴずうぶるるるるる
ぼっぶんどべんぼっぶんべん
けたたましい音をたてながら、巨竜が目覚めるかのようにオレたちの車が駆動準備を整える。
這いつくばったケナガワニのような外観。
前は物流に使われていた中型重装多輪駆動車――との名目だが、実際は継ぎ目の跡も目立つ雑な仕上げの改造車だ。
オレの素人目にも元クレーン車のクレーンをひっぺがしたあとの荷台に、鋼鉄の幌をくっつけただけなのがよく分かる。
二階建ての家屋ほどもある高さに、ミウの身長ほども直径のあるタイヤが片側六つの計十二個。
巨大で頑丈でどんな荒地も走ることができるが、乗り心地はもちろん悪い。
タラップを登って乗り込む運転席のシートは三人が並んで座っても広々とした余裕がある。
むりやり詰めれば大人六人ぐらいは座れるだろう。
更に、シートの後部にも同じだけの幅で奥行きのあるゆったりとした空間があり、雑魚寝をすればやはり六人ぐらいは横になれる。
まあ、何だかよく分からないガラクタや本や洗濯もろくにしていない衣類が散乱している現状では、頑張ってスペースを確保しても一人寝るのがやっとなのだけど。
ちなみに車に着くなりオレは先ほどまで着ていたズボンとパンツ、それについでにシャツ――つまり上から下まで全部の服を着替えた。
粗相をしちまったと思ってたが、出てたのは粘り気のある血とかよく分からない体液だとかの方が主だったようで、服も体もパリパリのどろどろになっていた。
もったいないが服はもう捨てるしかないな。
捨てる訳にはいかない体は、師匠に急かされながらも車の配管部にあるバルブをひねって水を出してざっと洗う。
エンジンが温まるにつれ、余熱によって水も温まる。
ほどよいぬるま湯。いい気持ちだ。
急いで体を拭いて新しい服を着て操縦席に戻ると、ミウが物珍しげに運転席内を物色したり窓から顔を出したりしていた。
ガラ師匠に質問をして、師匠もそれに答えたりしている。
別に急ぐ必要なかったんじゃないか?
ガラ師匠に担がれていた彼女は車に到着するやいなや、肩から飛び降りて元気に自分でタラップを登っていた。
途中で目覚めてはいたが「楽だから」との理由でそのまま担がれていたらしい。
まあ、オレが運んでたわけじゃないからなんだっていいんだけど。
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