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走行中は常にぶるぶると振動が続く。
図体がデカいので、悪路であっても揺れはさほどではないが、震え続けているのもけっこう疲れる。
初めて乗った時は揺れより震えで気持ちが悪くなったし、慣れるまでけっこう日にちも掛かった。
ミウもきっと酔うだろうと思っていたのだが、ひとしきりの好奇心を満たした後の彼女は、座席で平然とくつろいでいた。
車は市街地に戻ることなく、荒野へと出ていた。
ひと悶着のあった市民公園は街の郊外にあり、そのまま雑木林を迂回すれば市街地を通ることなく太路(たいろ)へと出られた。
ちなみに太路とは、街と街、あるいは行政上、地形上の要所同市を結ぶ大陸上に無数に走る大きな道のことだ。
道と言っても舗装されている場所なんてごくわずかで、あとは物流トラックや大型旅客トラックなどが踏み固めただけの、かろうじで森や荒地と区別されるだけの代物だ。
もし個人乗用の小型車が乗りいれたなら、その途端に立ち往生してしまうだろう。
で、あとは野盗か野生動物の餌食。
街に暮らしている分には旅行以外で太路を利用する機会などなかったし、日頃はその存在を気にも止めていなかった。
それが今や……
「なんか、落ちぶれたような気がするんだよなあ……」
野盗や猛獣の危険と隣り合わせの荒れた旅路。
それにもちろん「特公」も。
「おう、いつでも降りていいぞ。わざわざ停めねぇけどな」
肩幅ほどのハンドルに両足を乗せ、シートにふんぞり返っただらしない恰好のガラ師匠は前方からは視線を外さないままに応える。
これでも一応は運転中だ。
「ケガする。降りるならミウが風をつかう」
「いや、いいよ。降りねぇし」
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