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だが、オレの猶予は早くも崩れ去る。
「飛突(ひとつ)」
少女が言う。
突然揚力を失い、ふらりと頭が地面に向かう。
そして垂直落下。
両手が風切羽のように後方に伸ばされる。
加速度的に落下速度が上がる。
着地すれすれで両手をひろげると、
落下の勢いをほとんど殺さないままにほぼ直角に方向転換をする。
地面と平行に、風を纏い、鋭く飛び、そのままオレの方へ――
グボァ
猫のように大きな釣り目がオレに到達するよりかなり以前に、
巨大な鈍器がぶつかってきたような衝撃がオレを襲った。
切羽詰った危険を感じて反射的に身をよじったが、
訳も分からないままに世界が回り、
気がつくとオレは弾き飛ばされて地面に追突する直前だった。
で、追突。
それから暗転。
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