闇の舟は光の空を渡って

vs. 風を操る少女 ミウ

だが、これはチャンスだ。

わざわざ向こうから近寄ってくれたんだ。
もう一度空に逃げられる前に捕まえるんだ。

オレは何とか薄目を開ける。

ぼんやりとした影を確認して、跳ね起き様に当てずっぽうで右手を大きく振るう。

いわゆるロングフックだが、かわされても別に構わない。
距離を取らせないための間もたせだ。

近接戦闘に持ち込めば、風を使った攻撃のメリットは激減するはず。

思惑通り攻撃はかわされるが、こちらの姿勢も整った。

後ろ足を差して間合いを詰めつつ更に牽制の右拳を放つ。

鞭を振るための瞬間のタメを取れず、少女は防御に徹するしかない。

だが、どのみち格闘になど慣れていないのがまるわかりだ。
近接戦闘での数手のうちに、イニシアチブは完全にオレに移った。