嵐の前の凪のような

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最後の一人。黒いヴェールで顔を隠した女。彼が一番苦手に思っている人間。自分と同じ匂いがする。自分と同じく――何かを隠しているような。 何よりも通称がなく、経歴不明な点があるのに重用されている実力がある。なのに名は出回らない。矛盾の存在。 彼ら魔術師組が後列で、彼女が前列に居た時。彼らが放った魔法を彼女は完璧とは言わないまでもコピーして見せた。 その後も前列では様々な武器を用いて。後列では様々な魔法を用いて、彼女は戦場を撹乱した。 全てを見通すような展開配置。魔力値。魔法発動までのタイムラグの短さ。多数の他国の術式。どれを取っても魔法使いとして自分に勝る能力値。 それに多種多様な武具を操り、前列も後列もこなせるバリアブルな才能。クロメには無い自在に武器を操れる特性。クロメには無い魔術師としての特性。 ただ、そんな能力もクロメの前では意味を成さない。そもそも同じ土台にすら立てない。条件さえ整えば彼は――無敵なのだから。  
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