嵐の前の凪のような

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両軍に熱が入る。手に持った槍に気合いが入る。これはヤバい。クロメはそう思いながらも止められなかった。今までの相手側の態度に不満を持っていた私兵側が先立って槍を構えていた。 「本気の戦をするというのか。これは戦争だぞ。立場が分かっているのか。近隣諸国の連合と対するなら、貴殿ら軍は孤立無援になる。それでも良いと?」 言葉巧みに挑発を交ぜながら戦闘を回避しようとする相手側の大将。クロメ達の軍は王国直属ではあるが、意志決定権は無い。勝手な行動はできない。 「帰ろーよ団長。ここは穏便に済ませた方が無難だ。俺は死神だの、なんだの言われなれてるから大丈夫。ここは俺に免じて引いて貰えない?」 それでも剣に手を掛けようとした団長の手を引く。無用な争いは嫌いだ。人を殺して得られるのは悲しみだけだ。それをクロメは知っている。  
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