嵐の前の凪のような

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この世界はどこまでも広い、広くてとても恐ろしい、と思う。ザリザリザリ。口の中まで砂埃が侵入してくるような砂漠地帯に、彼らは居た。  Pace 1      ☆―出会いの記憶―☆ 「がぁぁぁぁぁぁぁっ! もう嫌だ。やだやだやだやだぁ! 砂漠砂漠砂漠で砂砂砂砂砂ぁっ!! 暑いし怠いし疲れたしもう嫌だ!!」 暑さに負けない熱気の篭った少し高めの男の声が、虚無感を漂わせる砂漠のド真ん中で高らかに響いた。それに答える風体で。 「あぁ神よ。この愚かでゲスな男にも貴方の慈悲深い心を分け与えたまえ。なれば彼の者の愚劣な心にも少しだけ荒んだ風が吹くでしょう」 頭の先から足の先まであるピッタリとした長い白い修道服を着た女が、真っ黒な外套で身を隠している男に応えた。 男は彼女を呆れた様子で観察しながら、深く溜め息を吐いて、ただ頭上で、ただ律義に輝く太陽に向けて皮肉を吐いた。……馬鹿野郎。と。  
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