嵐の前の凪のような

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剣には手を触れず、ふぅっと溜め息を吐いてからやる気を削がれたように部隊長がクロメに言う。 「今は団長じゃなくて部隊長だ。この度は失礼な態度を取ってしまいました。申し訳ない。少し頭に血が昇っていたようで」 「ふふん。王国直属の軍の部隊長ともあろう者が頭に血が昇り易いなど、矢面に立ち向かうにあらず。そりゃあ下の者も同じように単純になりますわなあ。部隊長どの」 この言葉に酷く腹立たしさを覚えた。何時でも国を守っているのは誰か。周辺諸国を助けているのは誰か。誰の軍勢が攻め居られた時に救援に向かっていると思っていやがる。クロメの心の中が、どす黒く染まっていく。 「部隊長。いや部隊長様。私、客員騎士の影の魔法使いは今を以て貴国より離れます。ご無礼を承知で申し上げました」 その言葉と同時に相手側の陣に殴り込みに行く。王国直属の軍から離れた一般人になら、出来ることもある。独りぼっちの反乱軍だ。  
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