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城下街を抜け、城の敷地内にたどり着いた彼は直接城内に向かうのではなく、報告をするべき場所へ向かった。
城外にある大きな二階建ての報告所。豪華で綺麗なお城を見てからでは、少し……いや、かなり見劣りする残念な造りだが、彼にとってはスラムな匂いがして自分に相応しい気がする。
「……どーも。魔物退治して来ましたー」
ギギギィと錆びた扉を開きながら遠慮がちに彼は報告をする。伏せがちな顔をあげると受け付けの女の子と目があった。良かった。彼は内心安堵した。
「はい。お疲れ様です。クロメさん」
袖口にフリフリの付いた可愛い制服を着こなし、金色の髪に映える、こぼれ落ちそうなくらい大きい碧眼が愛嬌を振り撒いて、こちらを視認して和らぐ。
「いや良かったよ。余りに遅かったから統率長が居るのかと思ってさ」
「あー、そのー、クロメさん、そのー、実はー」
受け付けの女の子の顔色が変わった。流れる目の先に居たのは、扉の死角に佇む無駄な筋肉の付いた暑苦しそうなむさ苦しい男。統率長だった。
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