嵐の前の凪のような

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雷のような怒声が落ち、古く老朽化の進んだ報告所がミシミシと音を立てる。軋んだ後に崩れたりしないだろうか、彼は、ぼんやり振り落とされる寸前の拳を見ながら、そう思った。  ―――― 「いーーっ。と、とりあえず報告します。苦情にあった暴れていた魔物は完全に駆除して来ました。ちゃんと根城まで完璧に」 彼は怒れる拳骨の落ちた頭部を押さえて、涙を目に浮かべながら正式な報告と任務の引き継ぎを行う。 「これが証拠の猪の牙でしょ。狼の爪でしょ。熊の手。兎のしっぽ。それから虫型の魔物の体液」 合わせて数十近い品を取り出す。路銀にするために売った毛皮類は報告しない。それが報酬の取り分+αになることが暗黙の了解であると知っているからだ。 「何度見ても奇怪よな。良くもまあ魔法だけで、これだけの数の魔物を駆除出来るもんだ。一度、剣の手合わせしたいものよな」 統率長――本来なら騎士を纏める団長だが、ここにおいては勤め外なので任務を統率をする長。統率長と呼ばれている。  
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