嵐の前の凪のような

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統率長の話を軽く聞き流した後は、いつもと同じように、この国の歴史を勉強する。統率長の話を聞きながら、肌身離さず持ち歩いているメモ帳に要点を纏め出す。 メモ帳には三ヶ国分の歴史的要点がびっしりと纏められている。一度だけ受け付けの女の子に見せて欲しいと言われたが、彼は断った。不思議がる彼女を尻目に『大切な物だから』と言い訳を添えて。 「うっし。大体の系譜は掴めた。ありがとう統率長。これで俺の野望に一歩近付いたよ。後は伝承とか調べて」 「なんでも良いけどよぉ。ちゃんと帰って寝るんだぞ。明日は朝から演習で国外遠征だ。寝坊でもしたら死刑ものよな」 パタンとメモ帳を閉じた彼は笑顔で『ちゃんと帰って寝るから大丈夫』と言って退けた。大きな欠伸をすると、彼らに別れを告げ、城内にある客員騎士専用の自室へ引き上げて行った。 彼の一日は、こうして終わるのである。  
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