月明かり照らす雪降る都で

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1863年(文久3年)末、大晦日。 「きゃああああっ!!」 静かな夜の町に、悲鳴が響き渡る。 大通りから外れた薄暗い路地。 そこには、一人の女性を囲んだ数人の男の姿が。 そのうちの一人は、女性を羽交い締めにして、口を塞いでいた。 「んっ、んんーっ!」 「大人しくしてろよ、お嬢さん。別に何かしようってわけじゃねぇんだ」 正面に立つ短髪の男がそう言って合図をすると、女性の口を覆っていた手が離れる。 「お嬢さん、えらく新選組の連中と仲が良いらしいなぁ」 「あんたたち……長州勢かい?」 端麗な容姿に似合わず鋭い目つきで睨む彼女を、男は面白そうに眺めている。
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