第1章 リングはイルミに煌めいて

2/46
2813人が本棚に入れています
本棚に追加
/679ページ
Ⅰ 唐突に無造作に、テーブルの上に置かれた紙を、僕は穴が開くほど見つめた。 A3サイズの赤色の枠に囲まれた用紙。 テレビドラマとかで見たことはあっても、現物は初めてお目にかかりました。 これって。 もしかしてもしかしなくても。 婚姻届けの用紙だよね…? よもやまさかと思いながら。 僕は目の前の人に尋ねる。 「ありこさん、これ…何?」 目の前の彼女は、僕の質問に。 鋭い瞳を更に光らせて。 紅いルージュの綺麗に引かれた口の両端を上げた。 そして。 僕の予想通りの言葉が飛び出す。 「見りゃわかるだろ? 婚姻届け」 ええ、それはわかりますとも。 僕が。 聞きたいのは。 何故、これが僕たちの家のリビングの小さなローテーブルの上に乗っかってるのか、ってこと。 「考えたんだけどさ。この際だから、入籍しない?」 「はあぁぁぁぁ!?!?」 …絶対、考えてないし、 入籍って、この際だから、するようなものじゃない…だろっ。
/679ページ

最初のコメントを投稿しよう!