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Ⅰ
唐突に無造作に、テーブルの上に置かれた紙を、僕は穴が開くほど見つめた。
A3サイズの赤色の枠に囲まれた用紙。
テレビドラマとかで見たことはあっても、現物は初めてお目にかかりました。
これって。
もしかしてもしかしなくても。
婚姻届けの用紙だよね…?
よもやまさかと思いながら。
僕は目の前の人に尋ねる。
「ありこさん、これ…何?」
目の前の彼女は、僕の質問に。
鋭い瞳を更に光らせて。
紅いルージュの綺麗に引かれた口の両端を上げた。
そして。
僕の予想通りの言葉が飛び出す。
「見りゃわかるだろ? 婚姻届け」
ええ、それはわかりますとも。
僕が。
聞きたいのは。
何故、これが僕たちの家のリビングの小さなローテーブルの上に乗っかってるのか、ってこと。
「考えたんだけどさ。この際だから、入籍しない?」
「はあぁぁぁぁ!?!?」
…絶対、考えてないし、
入籍って、この際だから、するようなものじゃない…だろっ。
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