2820人が本棚に入れています
本棚に追加
「てんちょ」
昔からの癖でそう呼ぶと、困ったように眦に皺が寄る。
「ここで、そう呼ばれると誤解招きそうでいやなんだけど」
ああ、店長じゃなくて、売場の責任者なんだっけ。
「別にアタシの知ったことじゃないし。ねえ、店長、穂積何処にいる? 今日約束してたのにいないんだけど」
「約束あったのかよ」
ちっ、と店長が舌打する。
「何処に行ったの?」
「すぐ戻ってくるよ」
「だから、何しに何処に行ったの?」
「秋津って…パートの子どもが、家飛び出して、うちの店に紛れ込んでた。その子。送り届けてくるってよ」
また、その名前聞くとは思わなかった。
「そんなの、穂積の仕事じゃないじゃん」
「俺も、そう言ったぜ」
だけど、その子が相沢から離れなくて…とか、店長は強い言葉のあとに言い訳みたいに付け足した。
何で、穂積がパートさんの子どもの世話までしなきゃいけないの。ほっとけば、いいのに。
守衛さんにでも預けて、母親に連絡入れて。
それで、十分なんじゃないの?
最初のコメントを投稿しよう!