第9章 戻れない明日

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「てんちょ」 昔からの癖でそう呼ぶと、困ったように眦に皺が寄る。 「ここで、そう呼ばれると誤解招きそうでいやなんだけど」 ああ、店長じゃなくて、売場の責任者なんだっけ。 「別にアタシの知ったことじゃないし。ねえ、店長、穂積何処にいる? 今日約束してたのにいないんだけど」 「約束あったのかよ」 ちっ、と店長が舌打する。 「何処に行ったの?」 「すぐ戻ってくるよ」 「だから、何しに何処に行ったの?」 「秋津って…パートの子どもが、家飛び出して、うちの店に紛れ込んでた。その子。送り届けてくるってよ」 また、その名前聞くとは思わなかった。 「そんなの、穂積の仕事じゃないじゃん」 「俺も、そう言ったぜ」 だけど、その子が相沢から離れなくて…とか、店長は強い言葉のあとに言い訳みたいに付け足した。 何で、穂積がパートさんの子どもの世話までしなきゃいけないの。ほっとけば、いいのに。 守衛さんにでも預けて、母親に連絡入れて。 それで、十分なんじゃないの?
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