第9章 戻れない明日

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(もう、時間潰せるような店も、なくなっちゃったよ) 駐車場の灯りを見て、アタシは溜息をついた。 集中豪雨のような雨は、勢いをなくして、今は灯りの下にその微かな雫が確認できるくらいの、しとしととした雨が残ってる。 さっき、一度だけ電話したら。 「ごめん、もう少し待ってて」 もう少し、ってどのくらい? 何してるの? 何処にいるの? でも。 「忘れてないから」 穂積がアタシを安心させるように言うから、何も聞けなくなった。 ショッピングセンターも、通常のショップはみんな閉まっちゃって。 行き場所なくなって、上の駐車場に来てる。 (もう帰ろうかなー) ずっと待ってるのに、何の反応もない携帯電話をじっと見つめた。 「まだいたのか」 呆れ果てたように言って、だけど優しく、アタシに傘を差しかけてくれたのは、穂積じゃなかった。 「店長」 「何やってんだ、あいつ」 アタシが聞きたいよ、それ。
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